家族に断りもなく大事な事を決められてしまうのは、辛い事です。ましてやそれが、命が絡んでくる事なら尚の事。
何故、一言も相談してくれなかったのか。自分と相手とはそれすらも話し合えない間柄だったのか。それとも、何も言わず全て受け入れる事だけが求められているのか………。
今回は、猫が絡んだ悲劇のお話です。
事の発端
もうどうしようもないのですが、ノワールさんが猫を3匹連れ帰ってきたのです。そう、3匹も…。
猫を保護するなんて初めての事だったので、とりあえずはご飯じゃないか?とキャットフードをあげました。お互いに寄り添いながら、しかしガツガツと(周りにまき散らしながら)食べています。
どうやらその3匹は兄弟らしく、柄が似通っていました。基本ベースは「サビ猫」。黒毛に茶色が所々混ざり、世の中では「みすぼらしい」とされて敬遠されている柄です。「だからきっと貰い手もつかないだろうから。」そう言ってノワールさんは連れ帰ってきたのでした。
兄弟でも少しずつ柄の出方が違う為、それぞれを見比べながら、「これからどうしよう…。」と考えていました。
外で生きてきたこの子達は、プリューシュとは違う。すぐに懐いたりはしてくれないだろう。今まで野良猫を保護した事なんてないのに、自分に世話が出来るんだろうか。
惨状
お腹が満たされた子猫達は元気回復とばかりに、部屋の中を走り回って遊びます。あまりにもはしゃぎ過ぎて、部屋の中が散らかりだしました。プリューシュよりも身軽な猫達はオープンラックの間をするりと走り抜けたり、飾ってあった雑貨などを面白半分に落としたりしながら好きにやらかしています。
一つ、また一つと物が倒され、破壊されていくうちに、段々と怒りがこみ上げてきました。
なんで私はこんな目に遭っているのか。自分が「飼いたい」と言った訳でもない、ただ「可哀そうだから連れて帰ってきただけの猫3匹」の世話を今、たったの一人でしてるんだ?
優しく出来ない自分に苛立ちながら一人で怒り続ける夕暮れ
倒されたものを元に戻しながら、イライラしている原因について考えました。もう、この子達はノワールさんが保護すると言った以上、この家に居続ける事になる。でも、実質世話しているのは私じゃないか。
「捨て猫だから可哀そう。」
「サビ猫は人気が無いから、きっと貰い手が来ない。」
「3匹一緒じゃないと…。」
………どれももっともな理由で、だからこそ自分の中の「善意」が、一緒になって育ててあげないとって私に言ってくる。でもそれは私にとっては「一方的に苦しい状態」なのでした。
グチャグチャと考えながら、3匹のうちの1匹を捕まえました。肉球の先を押すと爪がせり出してきます。出てきた爪を見ると、長く伸び過ぎて怪我をしそうでした。これは…、爪を切ってあげないと。
…こんな風に私は、自分の気持ちとは裏腹に動きを止める事が出来ない。
どうしようもない夜明け
…。
……。
………と、いう夢を見ました。
…心配しながら読んで下さっていた方、御免なさい。夢です、夢。タイトルに【悪夢】と前置きしておいたのでお許し下さい。
…私ね、こういう「やけに具体的な悪夢」を見る事が多いんですよ。「なんとなく嫌な感じがする」ではなくて、「○○がこうなって○○になり、自分の気持ちは○○だと思っている。けれど、○○はこういう理由でうまくはいかない」とかいう具合に、「今、まさに、その問題に直面しているかの様な夢」を見てしまうんです。
そうだなぁ…、ここ最近、見た夢の話をしましょうか。
「唐突に口の中に異物を感じ、舌でその異物をなぞってみた。すると、口の中をゴロリと動く。口内が気持ち悪くなったので吐き出してみると、それは自分の歯だった。」
「抜け落ちた歯は裏返すと歯の根が見え、そして、真ん中には穴が開いていた。これは子供の頃、歯が抜けた時に見たから覚えている。」
「抜け落ちた異物が自分の歯だと認識するのと同時に、口の中から血の味がしてくる。そしてまた、違和感を感じ、口を開けようとすると…、」
「ボトリ…、ボドッ、…ボトトッ、」
「次から次へと痛みも無く、ただ、血だけが流れて歯が抜け落ちていくのだった。」
一体どんなホラーなのか!
この夢を見た時の「感触」や「味」というのを、今でも思い起こす事が出来る…。それ故に、「いつか歯が抜けるんじゃないか?」と、私生活にも支障を及ぼすほどの恐怖を感じる様になってしまいました………。
…話は戻して、サビ猫の夢の話。これは…、そうですね、「もしかしたらノワールさんならそうするかも?」と思える所が随所にあるというのがリアリティを生んでいるんだと思います。
例えば。世間でもてはやされる柄じゃなくても、ノワールさんはサビ猫を「それも一つの個性」と受け入れる人間性を持っています。そして、「3匹一緒じゃないと可哀そう」という件は、まさにノワールさんらしい優しさ。…そういった所ですね。そういう所が「いつかノワールさんならそうするかもしれない」になって、この夢になったんだろうと思います。
それにしても…、「何故、こんな夢が出来上がったのか」という察しは付くものの、それとは関係無く苦しい夢だったなァ~…。
…文章にすると、夢の中では冷静にふるまっている様に読めますが、実際は「畜生、勝手に3匹も連れ帰りやがって!」と怒り狂ってました。(夢の中ですら不満を言葉にせず、グッと飲み込んで世話ばかりして)辛かったわぁ…。(激情を表現する為にあえてバイオレンスな言葉を使っております、悪しからず。)
私「う~ん、この夢さ…多分、プリューシュが死んだ後の話だったよ?」
私「いや、まぁ…、夢の話だしさ?」
私「だから、夢の話だってば!」
最後に
この夢の話を通じて、読者の皆さんにお伝えしたいのは「たとえそれが優しさだろうと、家族の同意も無く猫をお家に連れ帰ってはいけないよ」という事です。
自分一人の行動で他人を大きく振り回す事は、優しさが動機であっても簡単に許されるものではないという事をちゃんと知っておいて欲しいのです。か弱い猫を保護する事は「良い事」ですが、自分以外の他人に善意を強いてはいけません。
壮大なテーマでお送りした、悪夢の話でした。