赤ちゃんとの共同生活が始まり、プリューシュの立場が随分と様変わりしました。それまでは「自分だけが可愛がられるポジション」にいたのに、今やもうそのポジションは赤ちゃんに総取りされ、輝かしい日々は遠い日の様…。
今回は、「嫉妬に狂ったプリューシュがどういった行動を取ったのか」について記事にしたいと思います。
猫が嫉妬すると、どんな行動を取るのかについて
プリューシュが嫉妬を覚えまでの背景(=家庭環境)について。それまではプリューシュ中心の生活でした。
嫉妬に至るまでの家庭環境
人間2人と亀1匹、そして猫1匹というのが今までの家族構成でした。亀は家の外で飼っているので、プリューシュが日常接するのは私達だけ。したがって、今までは人間の興味関心が全てプリューシュに向けられていました。
ところが、赤ちゃんと暮らし始めると、全てが赤ちゃん中心になります。プリューシュにとってはつまらない日々となりました。「自分以外が主役なんて許せない」…。まるでそう言いたげに、吊り上がった目で見てきます。
例えば、こんな表情で。
(この絵は、ノワールさんが描いてくれました。プリューシュのジト目がよく描かれていると思います…!)
人相(…猫相?)が変わるぐらい、心の中がグチャグチャになっているのが見て分かる…。
嫉妬から問題行動に至るまで
ここからは、嫉妬を覚え、そこから問題行動(?)に至るまでを、プリューシュの目線から小説形式でお送りします。
そう、あいつはある日突然、俺の家に来やがった…。
親父の腕に抱かれて、あいつは家の中に入ってきた。親父は、あいつを「バウンサー」というものに置き、顔を覗き込んでは何か色々と話しかけてた。「バウンサーには乗るな」と言われていたが、あいつは良いのか?
親父はあいつに顔を近づけ「寒くないか?」と聞き、あいつは何も答えなかった(俺にはそんな事、聞いた事がない)あいつは答えなかったのにも関わらず、親父はあいつにそっと布をかけた。
…俺はその仕草を見たくはなかった。
母さんは、あいつの事を常に気にかけている様だった。あいつが泣くとすぐに近寄る。そして、抱き上げて話しかける。俺は抱かれるのが嫌いだ。でも、あいつは…、あいつは平然としている。よく分からない奴だ。そして、何故か俺は面白くない気分になった。
母さんはあいつが泣いた時、何かを与えている様だった。俺の飯とは違うが、腹を満たすものを与えているのは見て分かった。ただ、気に食わないのが、あいつは抱かれたまま母さんから直接与えられている事。俺が食う時に、母さんの手から与えられる事は無い。時々、落ちた飯を拾って与えてくれるだけだった。
俺が子供の頃、母さんの手から飯を食った事がある。あれは気分が良かった。飯が舌に当たる時、母さんの手にも当たる。母さんの手が温かいのが心地良かった。もうガキじゃないから母さんにはせがまないが、…本当は、俺はあの頃みたいに食わして欲しい。
母さんにも親父にも手厚く保護されているあいつだが、俺に関しては無関心を貫いている様だった。俺には何も言わず、向かっても来ず。もっと言うと、俺を通して壁を見ている風な、そんな視線のやり方をする。俺は、近寄る気を無くした。俺を見ていない奴を構う必要があるか?
俺は俺で、それまでの暮らしを続けていく事に決めた。
…とまあ、こんな感じで、プリューシュは自分のペースを崩さない様に「遊びたい時に遊び、眠りたい時に眠る」スタイルを貫く事に決めた様でした。
「あいつには関わらず、俺は俺でやっていく」と決めた訳だが、予想外の事が起きた。
家の中に、何か色々な物が置かれる様になり、俺の遊び場が減った。母さんと遊ぶ時、隠れるのに丁度いい場所があったのに、それも物が置かれてなくなった(しかも、後からよく考えたらあれって、あいつの物ばっかりじゃないか!)
…場所の事は、まだいい。問題は、母さんがあいつと一緒にいる事だった。今までは、俺とずっと遊んでくれたのに、あいつが「あーん」というと、母さんはあいつの所にすっ飛んでいく。手に持った猫じゃらしを床に置いて。それは、俺の遊びが終わったって事だった。
神経質な母さんは、遊び終わると猫じゃらしをいつもの場所に戻す。戻した所で俺は直ぐに取れるから、あんまり意味が無いのに、戻す。でも、今日はそうしなかった。
俺は床に落ちた猫じゃらしを見た。…それは、俺自身の様だった。
(途中ですが、あくまで「プリューシュ目線で」お送りしております事をアナウンスさせて頂きます)
なんで、「昨日と同じ今日」が来なくなったんだろうか。何を間違えて、こうなってる?あいつのせいなのか?でも、あいつは俺に何もしてこないぞ?俺だって何もしていない。…一体、どうしたらいい?
俺は、自分の中に何かが燻っていくのを感じた。
ある日の事。母さんは親父に俺と遊んであげて、と言った。親父は俺の所に来て、猫じゃらしを振った。右、左、…右、左。親父は単調な振り方しかしない。猫心を抑えていない遊びをする。とはいえ、相手をしてくれているのだから、何もしないのも悪いだろう。俺は前足を出した。それを見ていた母さんが言う。
「全然遊べてないじゃない。あんまり構ってあげられてないんだから、遊べる時はもっと遊んであげないと。」
「だって、プリューシュが乗り気じゃないから…。」
親父が母さんに言い訳し、また、俺に向き直った。そしてさっきと同じ様に猫じゃらしを振る。その時、俺は親父の顔を見て全身の血が熱くなった。
「無理にでもそうして遊んであげないと、プリューシュが可哀そう」…。親父の眼に漂うのは、憐みだった。可哀そうって、…可哀そうってなんだよ!やめろ。その眼をするな。やめてくれ!
俺は自分を痛々しいものの様に扱われて不愉快になった。そして、叫び出す代わりに親父に飛びかかって噛みついた。本能のまま牙を突き刺し、俺は気分がスッとした。
「………ゴッ、」
一瞬、俺の視界が歪んだ。そして、身体の一部が熱くなる。血流に合わせてジンジンし、呼吸が乱れた。俺が噛んだ事に怒って、親父が鉄拳をくらわしてきたのだった。
「噛んじゃ駄目」…母さんは俺にきつくそう言ったが、今は、俺が俺自身の為に噛み付かないといけない瞬間だった。俺の名誉を守る為にはそうするしかない。たとえ母さんの言いつけでも、聞けない時がある。
親父とは距離を置いて、俺は呼吸を整えた。殴られた場所が痛い。何度か舐めて、痛みを抑えた。…そう、もう痛くない。痛くなんかない。俺は可哀そうなんかじゃない!
(ラグドールは穏やかな猫と言われますが、プリューシュは好戦的なタイプですね………。)
俺の毎日は段々とつまらないものになっていった。どうする事も出来ずに、淡々と日々は過ぎゆく。そして、日々を重ねる毎に俺の中を燻っていたものが、どんどん俺を支配していく様になった。気持ちが重い。俺はもっと明るい奴だった。
(天真爛漫な部分がありましたが、家族が増えた事によって、少し変わった様に思います。)
「あぁー、ああーん。」あいつが泣いた。母さんが床に敷物を敷いて、あいつの股を濡れた紙で拭いてやる。そして、カサカサした紙をあいつの股に当て直し、整える。
俺はその作業をじっと見つめた。愛の深い作業…、俺にはそう見える。俺は純粋に羨ましくなり、ただ、見つめ続けた。
一日のうち、あいつは何度も「あーん」と言い、母さんも親父も同じ作業を繰り返した。段々と、俺はあいつが二人の視線を独占しているのが気に食わなくなってきた。あいつは泣くだけ。俺は見るだけ。でも、俺もここにいるだろ。俺を見ろ。そう言いたかった。
(私にはプリューシュが本当にそう思っている様に見えています。)
うんざりする話だが、あいつはまた「あーん」と泣いた。母さんが敷物を敷く。そうして母さんがあいつの方に振り返った瞬間、俺は閃いた。そうだ、母さんを困らせてやれ。
音も無く敷物に近付き、そっと身体を伏せる。敷物からはあいつの匂いがした。俺はあいつに対して暴力を振るわずに蹂躙している気になり、俺はあいつより上なんだと思った。「あいつより上」…そう思うと、たまらなくなった。
あいつを抱えた母さんが振り返り、俺を見て驚く。そりゃそうだろう。何の音も立てなかったからな。俺がここにいるとは思わなかったに違いない。
「プリューシュ、…そこどいて~。」
案の定、困っている母さんの声が聞こえる。俺は断固として退かなかった。母さんは俺に退く意思が無いのを感じると、また別の敷物を敷いて例の作業をしていた。
…実の所、俺は母さんに怒られるんじゃないかと思っていた。母さんの作業を邪魔したから。でも、母さんは怒らなかった。母さんはしてはいけない事をした時、鋭く、厳しく叱る。何の容赦も無く叱りつける、そういう人だった。その母さんが怒らないのだから、俺は悪くないんだろう。
意外だったのは、母さんとあいつが使う敷物を俺が横取りしたにもかかわらず、母さんが柔らかだった事だった。ただの閃きでやった事だったが、俺は母さんに「ちょっとした意地悪」をした。しかし、そうした俺の気持ちを汲み取って、敢えて許してくれた感じもある。
…実際どうだかは分からないが、母さんがあいつだけを見ている訳じゃないんだと思って、嬉しくなった。その感情に浸る間、俺の中を燻っていたものがどこか遠くに消えて、気分が良い。
繰り返すうち、俺は楽しくなってきた。あいつ、また、「あーん」って言わないかな。
最後に
今回は小説形式でプリューシュの状態を表現してみましたが、如何でしたでしょうか。猫を飼うのは初めてですが、猫ってこんな風に嫉妬していくものなのですね…。正直な所、「プリューシュを猫として見ているけど、人間と大して変わんないや!」
現状、本人に対するケアが必要だと感じています。プリューシュは素直な性格ではないので、かなり難しそう…。少しでも好転すればいいなと思います。